僕らのチェリー
笠原澪はまるでおれの分身だった。
澪もまた、ヨネに対しておれが先生を想うように同じ報われない恋心を抱いていた。
「アンナ先生がいなくなってくれたらどんなにいいか」
そういって泣きじゃくる澪の気持ちは痛いほど分かっていた。澪が泣けば泣くほどおれの想いも溢れ出して、その度に苦しんだ。
彼女に伝えたいのに伝えることができない。
彼女のその白い手を握りしめたいのに握りしめることができない。
彼女は別の誰かを見ていて、その栗色の瞳はおれに向けられることはない。
どうしてだろうか。
いつしか恋心は憎しみを生んでその矛盾した感情は突き進むことを止めなかった。