僕らのチェリー
最終章「桜の季節」
今年もまた桜の季節がやってきた。
桃色の花びらはひらひらと舞いまるで白い雪のように地面を埋め尽くしていく。
あたしたちは高校三年生になった。
春を迎えて、桜並木道をきれいにするために全校生徒で雑草やごみを片付ける一年に一回の行事が始まった。
杏奈先生は毎年必死になって雑草を摘み取り、彼女のその姿は誰よりも桜を愛していた。
だから澪も奈美と一緒に、桜並木道をきれいにすることに励んだ。
それが杏奈先生のためになる気がしたから。
一人金網にもたれて桜を見上げている彼を見つけた。
「行っておいで、澪」
奈美が澪の背中を優しく押した。
あたしは頷いて、彼の元に駆け寄った。
「こんなところでさぼってるとアンナ先生に怒られるよ」
彼は小さく笑みをこぼした。
「桜がきれいだったからつい見とれてた」
澪はその隣に座ると、ポケットの中から取り出したそれを彼に差し出した。
彼は大きく目を見開いた。