僕らのチェリー
2.雨
杏奈先生と初めて会ったのは入学式。
新しく赴任してきた教師の紹介で、杏奈先生が少し緊張していたのを覚えている。
第一印象は清楚な雰囲気のお姉さんというものだった。
腰まである長い栗髪に、淡い薄化粧。
真っ白なスーツがよく似合っていて、まるで舞台に一輪の花が咲いたようだった。
「宮田杏奈です。今年赴任してきたばかりなので、この学校のことを色々と教えてください。よろしくお願いします」
と新入生だった生徒に必死に頭を下げる先生を見て、教室に笑いが起こった。
「先生。それはこっちの台詞ですよ」
生徒の一人がいうと、先生の顔はみるみるうちに赤くなり、まるで茹で蛸状態に澪は小さく笑った。
「あ、ごめんごめん。君たちも先生と一緒だったね。えと、これから不安なこともあるかもしれないけど、一緒に楽しいことや嬉しいこと共有していこうね」
そう言って微笑むその笑顔は優しくて、まるで魔法をかけられたように自然とクラスの緊張が解けた。
あの日から、杏奈先生は皆の人気者になった。