僕らのチェリー

最近、奈美は他校の男子生徒と付き合い始めた。

いわゆる合コンで知り合ったそうだが、話を聞く限りあまり評判のいい男ではなさそうだ。


「恭介が主催の合コンで知り合ったんだっけ?」

「うん。澪も来れば良かったのに」

「恭介が集めた男と合コンなんか死んでも嫌」

「ふうん。あっそうだ。ヨネも来てたよ」

「ヨネが?」澪は耳を疑った。

「うん。っていっても数合わせで恭介に無理矢理連れてこられたって感じだったけど。結局途中で帰っていったよ」


途中で帰ったと聞いて、澪はほっと安堵した。

と同時に彼を誘った恭介の神経を疑った。無神経にも程があるんじゃないか。

曇り空は次第により灰色を増して、雨音が強くなる。


「あーあ、放課後には雨が止むこと期待してたのに、これじゃあ止む気配ないね」

「まあまあ。雨のおかげであたしたち人類は水が飲めるんだからそう言わないで」

「はいはい、アンナ先生もそう言ってたね。雨は素晴らしいんでしょ。恵みの雨ともいうし」

「よく分かってるじゃない」

「そりゃあ物分かりのいいアンナ先生ご自慢の生徒だもの」


ふふ、と奈美は八重歯を見せた。

あの始業式から三ヶ月。

奈美は徐々に元気を取り戻していた。

今では杏奈先生を笑って話できるほどになっている。その笑顔はまだぎこちない気もするけれど、こうして悲しみは風化していくのだと思った。


「でも雨だと体育が男女合同になるから嫌なんだよね。しかも今日の授業バレーボールなんだよ」
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