僕らのチェリー
ホイッスルの音と共に、男子と女子が混ざって試合を始める。早くも男子のアタックが得点を決めた。
あんな攻撃を受けたら女子にとってはたまったものじゃない。
そう話しながら後半組にまわった澪と奈美は、次々とノートに得点を書き足していった。
「バイト始めた?」
その声に振り返ると、ヨネと恭介が壁にもたれて座っていた。
どうやら彼らも澪と同じく後半組のようだ。
「ああ、駅前のコンビニ。深夜にシフト入れた」
とヨネは答えた。
「おれの真似かよ」
「だっておまえ、深夜のコンビニはただ働きのようなもんだって言ってたじゃん。客も来ないし、おれ夜得意だし、どうせなら楽なバイトしたいしさ」
「バカだな、冗談に決まってるだろ。だからおまえは甘ちゃんなんだよ。楽な仕事なんてこの世にあるかよ」
「いいんだよどんな仕事でも。今はとにかく働ければ」
恭介の太いため息が聞こえた。
「なんで?」
「…なにが?」
「なんで急にバイトする気になったん?」
「別に珍しいことじゃないだろ。今までだって短期のバイトとかやってたし。そろそろ小遣いが欲しいだけだよ」
「ふうん」
するとこっちを見た恭介と目が合ってしまい、澪は慌てて目を逸らした。
きっと、また盗み聞きをしていると思われただろう。