僕らのチェリー
「ヨネ、バイト始めるってさ」
澪も恭介とわずかに離れたところでしゃがみ込んだ。
「駅前のコンビニでしょ」
「やっぱり聞いてたね」
くっくっくっと肩を揺らして、恭介は笑う。
二人で見上げる空はどんよりと灰色に染まっていて、相変わらず雨が止まなかった。
「どうしてあんな事を言うの?」
澪は静かに口を開いた。
「どんな?」
「やみくもに働いてもアンナ先生はあの世から戻ってこない」
恭介の眉根がぴくり、と動く。
「正論だろ」
「あたし、恭介のそういう人に気を遣わないところ嫌い。
この前だってヨネに薄情な奴とかひどいこと言ってたでしょ。
もう少しヨネを気遣ってあげたら?
あたし、恭介が一番薄情な人だと思う」
恭介は黙って澪の話を聞いていた。
一気にまくし立てたせいか、息が苦しかった。