僕らのチェリー

二人の間で無言が続き、やがて澪は恭介と目が合った。

ヨネの丸っこい瞳と比べて恭介は目つきが鋭い。澪はとっさに身を構えた。


「おれは澪のそういう人の話盗み聞きするところ嫌い」

「えっ」


恭介の口元に笑みが浮かんだ。


「一番関係ないくせにその出しゃばる癖なんとかしたら?ヨネが好きなのはおまえじゃなくてアンナ先生なんだから」


殴ってやりたい、と思った。

恭介と話をすると、いつもこうだ。

母子家庭だがなんだか知らないが、妙に大人ぶったその態度に澪はいつも見下されている気がしてならないのだ。

どうして、ヨネはこんな奴と四六時中一緒にいるのかと疑問に思う。


「大体、澪だって薄情な奴じゃん」

「どういう意味よ」

「事故前日。澪、おれに言ったよな」

「…」

「あの時おまえ、おれに─────」






雨が、降っていて良かった。


雨は好きだ。


今は聞きたくないその言葉を雨音が遮ってくれるから。


あたしの醜いところを洗い流してくれるようだから。


でも、所詮それも幻想に過ぎない。
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