僕らのチェリー
「えっと笠原と秋谷だったよね。いつもアンナ先生と一緒にいる」
「うん。だってお喋り同好会だもん。ね、澪」
うん、と澪は頷いた。
「お喋り同好会ってなんか楽しそうだな」
「楽しいよ。米原君も入る?」
「えっいいの?」彼の目が輝いた。
「うん。今部員募集中だから」
「やった。じゃあおれも仲間に入らせてもらおっかな」
「きっと先生も喜ぶよ」
もちろん澪と奈美は冗談で言ったつもりだったから、まさか彼が本気で来るとは全く思っていなかった。
翌日になると彼はさっそく教室に遊びに来て、いつの間にか杏奈先生の横に座ってにこにこと笑っていた。
「先生。米原君も仲間に入れてもらいたいって」
最初は驚いていた杏奈先生も、事情を話すとすぐに笑って了承してくれた。
女三人に男一人にも関わらず、社交的でどこか人懐っこいヨネの性格のおかげか、その日はいつもより場が盛り上がった気がした。
「面白い子ね。ヨネ君」
彼が教室に戻った後、先生はそう呟いた。
「あっもしかして先生、米原君に惚れちゃった?いけないんだあ、禁断の恋」
奈美がからかうように先生の腕をつんつんと突くが、先生は慌てる様子もなく、くすりと小さく笑った。
「そうね。もう少し遅く生まれてたら好きになってたかもしれないわ」