僕らのチェリー


「えっと笠原と秋谷だったよね。いつもアンナ先生と一緒にいる」

「うん。だってお喋り同好会だもん。ね、澪」


うん、と澪は頷いた。


「お喋り同好会ってなんか楽しそうだな」

「楽しいよ。米原君も入る?」

「えっいいの?」彼の目が輝いた。

「うん。今部員募集中だから」

「やった。じゃあおれも仲間に入らせてもらおっかな」

「きっと先生も喜ぶよ」


もちろん澪と奈美は冗談で言ったつもりだったから、まさか彼が本気で来るとは全く思っていなかった。

翌日になると彼はさっそく教室に遊びに来て、いつの間にか杏奈先生の横に座ってにこにこと笑っていた。


「先生。米原君も仲間に入れてもらいたいって」


最初は驚いていた杏奈先生も、事情を話すとすぐに笑って了承してくれた。

女三人に男一人にも関わらず、社交的でどこか人懐っこいヨネの性格のおかげか、その日はいつもより場が盛り上がった気がした。


「面白い子ね。ヨネ君」


彼が教室に戻った後、先生はそう呟いた。


「あっもしかして先生、米原君に惚れちゃった?いけないんだあ、禁断の恋」


奈美がからかうように先生の腕をつんつんと突くが、先生は慌てる様子もなく、くすりと小さく笑った。


「そうね。もう少し遅く生まれてたら好きになってたかもしれないわ」
< 33 / 173 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop