僕らのチェリー
時間は深夜の一時を過ぎていた。
澪が自転車で向かった先は、ヨネがバイトしている駅前のコンビニエンストア。
透明ガラスの向こうで彼がレジを打っているのが見える。
澪は自転車を止め、一呼吸を置いてから中に入った。
「いらっしゃい、って笠原じゃん」
ヨネの丸っこい瞳が大きく開き予想していた反応だった。
制服が妙に似合っている。
「ヨネがここでバイトしてるって聞いて遊びにきちゃった」
とわざと舌を出してみせると、ヨネは屈託なく笑った。
「助かった。今すごい暇してたからちょうど良かった」
店内は平日のせいか、客は一人もいない。
店番もヨネ一人だけだそうだ。
「どう?バイト」
「暇」
「だよね。駅前なのにこんなに客がいないんじゃ、このコンビニいつか潰れるね」
「大体、ここのコンビニ前から思ってたんだけど店員無愛想じゃね?それで昼間でも客がめったに来ないんだよ。だからおれが変えてやろうと思って」
「あは、革命をおこしてやろうって?」
「そう、コンビニ革命」
「小さい革命だなあ」
「いいんだよ。小さくても革命は革命」