僕らのチェリー
今、思えば。彼女がどうしてあんな事を言ったのか不思議で仕方がなかった。
まるで最初からこうなる事を分かっていたみたいに、彼女の言葉には重みを感じた。
救急車のサイレンがいつまでも鳴り響いて止まない。
桜の花びらは紅色に染まっている。
遠くから、私を呼ぶ彼の声が聞こえた。
やっと会えた。
でも、今は来ないでほしいと願っている自分がいる。
どうしてだろう。
あんなに会いたかったはずなのに。
どうして。
今は来ないで欲しい。
お願い。
ごめんなさい。
来ないで。
お願い。
ごめんなさい。
ごめんね。
本当にごめんなさい。
ごめんね。
ごめん。
冷たい雫が私の手を濡らしていく。
それを拭うことができない歯がゆさに、私は涙した。
ぼんやりと映る季節は私が大好きだった春。
桜の花びらは柔らかな風に運ばれて、やがて川の底へと静かに沈んでいった。
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