僕らのチェリー
第二章
1.夏の始まりと
蝉の声がいつまでも鳴き止まない、夏。
炎天下の中、澪は自転車を漕いでいた。少しスピードを上げると、汗ばんだ体に風が当たって気持ちいい。
やがて目的地に着くと、澪はそこへ駆け込んだ。
「ひゃーやっぱり中は涼しいね」
中はクーラーが効いていて、さっきまでの空気が嘘のようにひんやりと冷たい。
「お客様。ここはあなたのオアシスじゃありません」
澪がうんと背伸びをしていると、レジのカウンターでヨネはため息交じりに言った。
「そんなこと言ったらコンビニは何のためにあるの?」
「なんでもいいけどコンビニは一応物を買うところなんだから、来たからには何か買っていけよ」
「はいはい。ヨネがうるさいから、きょうは買ってあげるよ」
何だその上目線、と言ってヨネは煙草を整理し始めた。
学校が夏休みに入って、二週間。
相変わらず、ここのコンビニは客が少ない。今日も一人の中年男性が雑誌を立ち読みしているだけだ。