僕らのチェリー

恭介の自宅はヨネがバイトしているコンビニエンストアから少し離れた住宅街にある。


「昼にバイトが終わったら恭介の家へ行くつもりなんだ。笠原も一緒に来いよ」


というヨネに連れられて澪は懐かしい道のりを歩いた。

恭介の家へ行くのは高校一年の時休んでいた恭介に、杏奈先生に頼まれて連絡事項を届けに行った時以来だった。

インタホーン越しでもわかる恭介の無愛想に、奈美と愚痴を言い合ったのがついこないだのように思う。

ヨネはチャイムを鳴らすと、反応を待たずにそのまま恭介の家に上がり込んだ。

鍵が開きっぱなしの不用心さと、すがずかと階段を登っていくヨネの図々しさに、澪は口をあんぐりと開ける。


「大体この時間はいつもおれが来る時間だから鍵開けておいてくれるんだよ。
一応チャイムだけは鳴らしておかないと、キョウが怒るんだ。
チャイムはおれが来たっていう合図だから」


そう言って、ヨネは二階の奥の部屋に消えてしまった。

澪は慌てて自転車を道の隅に寄せると、お邪魔しますと言って階段を登った。

少し薄暗い廊下の奥に、扉が微かに開いている部屋が一つある。

澪は恐る恐ると中を見ると、布団にくるまっている恭介の寝顔がそこにあった。
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