僕らのチェリー


「キョウ、照れてるんだよ。普段憎まれ口叩いてばっかだから、お礼なんて言われ慣れてないんだ。だからどう対応したらいいのか分からないでいる」


それを聞いて澪は思わず吹き出した。

よく見ると、恭介の耳が少しだけ赤い。

可愛いやつ。

澪は耳を真っ赤にしてる男に聞こえるように、声を大にしていってやった。


「さっきあたし、恭介のほうが兄貴みたいって言ってたけど前言撤回するね。
恭介のほうが子どもっぽいから」


恭介がこっちを見て恨めしそうな顔をした。

その顔があまりにも可笑しくて、ヨネと澪は揃って大きく笑った。


「じゃキョウ、おれらそろそろ帰るよ」


日が沈む頃になって、ヨネが立ち上がったので澪も後を追った。

恭介は欠伸をして、ひらひらと手を振りながら布団の中へと深く潜り込んだ。

その背中に、澪は小さく声をかける。


「恭介、学校やめないでよ」


恭介から応答はなかった。


「もう寝たの?」


彼を覆い被さった布団は微動だにしない。

本当に寝てしまったのだろうか。それともまた照れているのかもしれない。

澪はおやすみという意味を込めて布団をぽんぽんと優しく叩き、部屋を後にした。
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