僕らのチェリー

2.枯れた桜並木道




桜並木道に近づくにつれて、ミーンミーンと蝉の鳴き声が強まっていく。

自転車を降りて、緑の葉っぱで染められた桜並木が目の前に広がった。

近くにある学校の校舎は真っ暗で、まるで澪たちが通っている学校ではないように感じる。

ゆるやかな下り坂の向こうにはあの横断歩道がよく見えた。


「アンナ先生」


ヨネは静かにその名を呼んだ。

見ると、彼はあの場所に向かって手を合わせている。

その真剣な表情に、澪は黙って見ているしかなかった。

杏奈先生の命日は四月四日。

ヨネは五月四日、六月四日と一ヶ月を過ぎてはここに来ていたのだった。
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