僕らのチェリー
澪は携帯電話を閉じて、校庭の中央まで歩くとそこで横になった。
目の前は夜空で埋め尽くされて、それ以外は何も見えない。
ふう、とため息が漏れた。
何を感傷的になっているんだろうか、自分はと思う。
ばかみたいに悩んで。
ばかみたいにため息を吐く。
何もかもがばからしくて自分が情けなくなる。
「今も前と変わらないぐらい、前以上にアンナ先生が好きだよ」
ただ、彼のあの答えが何度も何度も、壊れたCDのように繰り返されて耳から離れない。
「痛い」
半袖のシャツに、草の先がちくちくと当たって痛い。
それを振り払うかのように横を向くと、暗闇の中で誰かが校門を開けているのが見えた。
急いできたのか肩で息しているのが分かった。