僕らのチェリー


「おいキョウ。おまえこんなに買ってどうすんだよ」


やがて最後まで止める声も聞かず、恭介が黙ってヨネの前に差し出したのは見たことのない商品の山だった。


「キョウ、本当にいいんだな」


かたくなに買うと聞かない恭介の意志に諦めたヨネは心配しながら次々とレジ打ちをする。

案の定、レジには見たことのない数字が並んでいた。

澪とヨネの額に冷や汗が流れる。

一方、恭介は平然とした表情でポケットから財布を取り出したと思ったらそのまま財布をポケットの中へ戻した。

その様子に怪訝として澪はヨネと目を合わせる。

恭介の顔には見慣れた憎たらしい笑みが浮かんでいた。


「ばあか。本当に買うわけねえだろ」


くっくっくっ、と肩を揺らす。

恭介が笑う時の癖だ。


「ちょっと大人買いっていうのを体験してみたかっただけ。
あーあ、すっきりした。
じゃあおれ帰るわ。
後片付けよろしく」


そう言い残して恭介はすたすたと店を出ていってしまった。
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