僕らのチェリー

店内に戻るとヨネが黙々と商品を棚に戻していた。澪も彼の隣についてそれを手伝った。

緩やかな音楽がBGMにのって流れている。

しばらくして、彼は突然吹き出した。

見るとお腹を抱えながら笑いをこらえている。

恭介の下らないいたずらに乗せられた自分たちがあまりにも滑稽で、しかもその後始末をさせれているのが可笑しかったのか澪も彼につられて笑ってしまった。

買い物かごいっぱいに埋め尽くされたお菓子の数々。それらを棚に戻しながら澪はヨネと笑い合った。

澪は彼の笑った顔を見ているうちに、恭介がどうしてあんな事を言ったのかその理由が少しだけ分かったような気がした。


「好きなものを求めることは決して悪くないことなのに、人間ってどうして我慢するんだろうな」


本当にどうして我慢をしなきゃならないのだろう。

あたしはいつから我慢をするようになったのだろうか。

彼を想う気持ちは変わらないのに、いつしかその気持ちを心に閉じ込めて身動きができなくなってしまった。

自分で自分を鎖で縛っているようなものだ。

自分のいる世界はまだ小さい。

好きなものを次々とかごに入れる恭介を思い出して、澪は彼の言った通りまだまだ自分がちっぽけなんだと思った。
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