僕らのチェリー


「そんなに悔しい?」

「なにが?」

「ヨネがアンナ先生とキスしてたことそんなに悔しい?」


一瞬頭の中が真っ白になった。

驚いて声も出ない。


「なんでそれ…」


やっと出た自分の声は少し震えている。くっくっくっ、と彼の笑い声が聞こえた。


「実はおれも見ちゃったんだよね。さっき教室で二人がキスしてるとこ。笠原もそこにいたろ?」


全身から血の気が引いてくのが分かった。

よりによって彼に見られるなんて。

澪は青ざめる。


「あんたそれ誰にも言っていないでしょうね」

「安心しろよ。おれはヨネと違って口は堅いんだよ。
いやしかし、まさか二人がそういう関係だったとは思わなかった。ヨネがしょっちゅう教室に遊びに来た理由が分かったよ。先生に会いたいがためだったんだな」


恭介は意地悪く話した。

どうしよう。

いや彼に知られたからといってどうにもなるわけじゃないのだけれど。
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