僕らのチェリー
それからが一ヶ月が立った。
冬休みが終わる頃、彼から杏奈先生と付き合うことになったと聞かされた。
澪は「おめでとう」と言えなかった。
そして二人が付き合うことは、澪だけが知っていた。
大事な秘密を自分だけに打ち明けてくれたその理由を訊くと、彼は「笠原はおれの一番の友達だから」と言った。
「良かったね、先生」
そう言うと、杏奈先生は優しく微笑んだ。
「ありがとう、笠原さん」
太陽の光が差し込む中、人目につかないところで二人はそっと寄り添う。
よく似合ってる、と心から思った。
「先生、おれ卒業したら働くよ」
「どうして?」
「早く先生を幸せにしたいから」
「そう…」
「そんな浮かない顔しておれなんか変なこといった?」
「ううんそうじゃないの。ただ」
「ただ?」
「今でも私十分幸せだよって言いたかったの」
本当に二人はよく似合っていた。
いつかその幸せが消えてしまうなんて、神様がやったことだとしたら神様はなんて意地悪なんだろう。
でもそれを誰よりも望んでいたあたしは、神様よりもっと心が汚いんだろうか。
────────────────────────────────────