僕らのチェリー


「だって…今までのこと謝りたいって彼が」

「そんなの嘘に決まってるじゃん。だから殴られたんでしょ」

「だって…」と何度も繰り返しながら、奈美は俯いた。


──自業自得。

ふいに、あの時の恭介の言葉が蘇る。


「先輩を選んだのは秋谷。男を見る目がない秋谷の自業自得なんだから仕方ない」


澪はその言葉を振り払うかのように首を振った。

確かに奈美は悪い。

だけどそれ以上に相手も悪い。

ここで澪が奈美を責めたところで、なにも変わらないのだ。


「とにかくきょうはうちに泊まりなよ。親にはあたしから言っておくから。ね?」


洗面台で濡らした冷たいタオルを奈美の頬に当てた。

奈美は小さな子どものようにずっと泣きじゃくっていた。そんな彼女を澪はそっと抱き寄せる。

小さな体だった。

きっとすごく怖かったに違いない。

世の中にはこの小さな体に簡単に傷付ける人がいるんだと思うと、やりきれなかった。
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