僕らのチェリー


「澪、ごめんね」


と奈美は小さな声で謝った。


「ううん。あたしのほうこそきつい事言ってごめん」


腕の中で奈美は首を横に振る。

それからまた、ごめんねと何度も呟くように言った。

彼女の気持ちは痛いほどよく分かる。

デートをドタキャンされても、何度もひどい目に合っても、奈美は決して自分から彼のそばを離れようとしなかった。

いつも近くで見ていたその気持ち。

人を好きな気持ちはそう簡単に変わらない。

それは澪自身がよく感じていたことだった。
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