求めよ、さらば与えられん
だったらどうして……そう思わずにはいられない。


聞くのが怖い。けど、このまま有耶無耶にしたらもう二度と聞けない気がした。



「バルドックに戦を仕掛けたのどうして?」



ジーン王子の目を見つめた。一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐにいつもの澄まし顔に戻った。ジーン王子も私から目を逸らさない。ちゃんと真っ直ぐ見てくれている。



「欲しいものがあった」

「欲しい、もの……? それだけの為に戦争をしたの!? そんな事のために沢山の命を奪ったの!?」

「そうだ」

「__っ!?」



こんな話をしていてもこの男は表情をピクリとも変えない。腹が立つ。想いが強くなった分、憎しみにも似た感情も強くなる。


戦を起こしてまで欲しいものって何!?それは戦を起こさなければならなかったの!?話し合いでは済まなかったの!?


いろんな言葉が頭に浮かぶ。それなのに何一つ口から出てこない。唇を噛み締めて泣いてしまわない様にする事でいっぱいいっぱいだった。


ジーン王子は私の頬に手を滑らせ、見下ろした。



「お前になら毒を盛られようと、刃を向けられようと文句は言わない」

「何を言っ__」

「殺されてやるつもりはないがな」



っ!?


まさかの突然のおでこへのキスに肩が飛び跳ねた。



「あまりに間抜け面だったんでな」



そう言うとジーン王子はテラスから出て行った。


突然の出来事に頭がついていかない。涙も引っ込んだ。それに腹が立つのと胸のざわつきで訳がわからない。


何故あんな人にこんなにも落ち着かない気持ちになるのか……それが悔しくて、泣きそうで、胸が締め付けられる様だった。




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