求めよ、さらば与えられん
午前中は仕事をしながらもグレース王女のことが頭から離れなかった。お昼休みになった事にも気付かなくて、薬室に顔を出したリュカさんを見てもうそんな時間かと驚いた。


ロアナはとびきりの笑顔でリュカさんの側へ駆け寄って行った。前を歩くロアナとリュカさんはの横顔は本当に幸せそうで、羨ましくなった。


私とジーン王子は側から見たらどんな風に見えるかな?きっと恋人同士には見えないだろうな。それどころか友人同士にすら見えないかもしれない。私たちは所詮、王城薬師と王子にすぎないだろう。


案内された二階のバルコニーからはお手入れの行き届いた庭園が見渡せる。


リュカさんとゴルチエさんも一緒にテーブルに付ければ良かったけど、ルネ王子がいる以上、一緒に食卓に付くわけにはいかないとのことだった。



「グレース王女とはゆっくりお話しされたんですか?」



彼女の事なんて聞きたくはなかったけど、知らないこともなんだか嫌で思わず自分から話題に上げてしまった。



「軽く話しただけだよ。 彼女の目にはジーン兄様しか写ってないから、ジーン兄様以外とは2人でゆっくりなんてあんまりないんじゃないかな」

「ジーン王子とグレース王女、お二人共素敵でお似合いですよね」



ロアナの悪気のない素直な言葉に胸をえぐられるようだった。





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