求めよ、さらば与えられん
「行く前からくだらない事を考えるな」

「くだらなくなんてありません! 人間いつどうなるかなんて分からないでしょ!? 私はその事を十分理解してる!」



ジーン王子に詰め寄った。けど彼も一歩も引かない。


パパを喪った時、マクブレインとの戦争の時、バルドックを出る時……それはどれも突然訪れた。予想出来た事など何一つない。


悔いのない様にと思うのなら、私は今この時、ジーン王子に想いを伝えるべきだろう。けど、今その想いを口にしてしまえば、きっと私は使い物にならなくなってしまう。戦場に役立たずはいらない。


ジーン王子の手が伸びてきた。



「ジーン?」



頬に触れようとした瞬間、サッとその手は引いてしまった。



「あら、ごめんなさい。 1人かと思ってたわ。 お邪魔だったかしら?」



余裕の笑みを浮かべるグレース王女。私にも彼女の様な女性らしさがあれば、もう少し違った目で見てもらえていたんだろうか。



「いいえ、そんな事はございません。 ジーン王子、労いのお言葉ありがとうございました。 ジーン王子のご期待に添える様、必ずや戦場でお役に立ってみせます。 それでは失礼いたします」



おへその前で組んだ手に力がこもる。2人に会釈をしてテラスを出た。





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