求めよ、さらば与えられん
歩きながら不意にテラスの方へ顔を向けると、ジーン王子の胸に顔を寄せているグレース王女の姿が目に映った。割って入れない雰囲気に胸が押しつぶされそうだった。


逃げる様に部屋に戻った。



「ただいま」



そうだ…レミーいないんだった。部屋に戻るとレミーが居てくれる事が当たり前で、思っていた以上に寂しい。


張っていた気が緩むと、膝がガクッと崩れた。立っていられず、扉の前で座り込んでしまった。



「もっ…、ほんと……や、だ__っ」



最近泣いてばっかり。自分に腹がたつ。私はどうしてこんなに弱いんだろう。


頭に温もりを感じた。



「泣く事は悪い事ではない。 そうする事でそなたは前を向いて歩いてこられたのだろう?」



アウロラの言葉に今までの事が走馬灯の様に蘇る。



「違うっ……前を向くしかなかった……そうする事以外どうすればいいのかっ、分からなかったの!!」



自分自身を奮い立たせて強く前を向いていたわけじゃない。怖かっただけ。情けない姿を見せて幻滅されるのが怖かった。






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