求めよ、さらば与えられん
肩を揺さぶられ目を開けると、馬車の中には私とフリオンさんだけになっていた。



「着いたよ」

「す、すみません! 私爆睡しちゃって……」

「あはは! いいんだ。 逆に安心したよ」



そうは言ってくれても、なんか恥ずかしかった。戦場に向かう馬車の中で爆睡するなんて…絶対能天気な奴だと思われた。



「さぁ、仕事の時間だ」

「はい!」



馬車を降りると、そこは結界内にある救護所の目の前だった。既に怪我人は運び込まれていて、切迫した空気が漂っている。


王都にいる時には想像もしていなかった。これ程までに酷い戦争になっているなんて……。


医師隊と連携を取りながら、薬室長補佐であるフリオンさんの指示に従った。



「ベアトリーチェ! 荷馬車に薬草を積んでるから、傷薬を調合してくれ!!」

「分かりました!」



分かっていたことだけど、本当に休む間もない。


沢山の血と悲痛な叫び声、命を落としてしまった人達……まだ1日と経っていないのに、私の心までやられてしまいそうだった。


悲しみと悔しさと腹立たしさ、色んな感情が入り混じる。急速に押し寄せる感情の所為で泣いてしまいそうだった。鼻の奥がツンとする度に下唇をギュッと噛み締めた。





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