求めよ、さらば与えられん
「ここに居たのか」



え?



「ジーン王子!?」



当たり前のごとく隣に座られた。



「しっかり食べろ」

「……貴方は食べたの?」

「当たり前だ。 いざという時に体力が無くては困るだろ。 お前も同じだ」



そうは言われても……。


気分は進まないけど、手に持っていたパンを一口かじった。咀嚼(そしゃく)するけどなかなか飲み込めない。結局水で流し込んだ。するとジーン王子は満足そうな顔をした。


みんなの前では見せない顔。そんな顔されたら私はどんどん自惚れる。馬鹿みたいに……。



「もう話は済んだの?」

「あぁ……」



急に指揮官の顔つきになった。



「明日、勝負に出る」

「え?」

「思っていたよりもあちらもかなり準備をしていたようだ。 戦況が芳しくない。 このまま消耗戦を続けても良くて共倒れだろう」



明日は今日よりも酷い状況になるかもしれないって事?


未知の恐怖に背筋が凍る。



「もっとたくさんの人が怪我するの? 死んでしまうの?」

「……そうなるかもしれない」

「他に方法はないの!?」

「民間人に被害が及ぶ事だけは避けたい。 つまり今ここで戦を終わらせる事が最善となる。 ここでどれ程の犠牲を払うことになろうとだ。 兵達は皆誇りを持っている。 命を懸けてでも王都や自分たちの家族を守りたいと思っている」





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