求めよ、さらば与えられん
怪我人の手当てが大体終わり、少し休憩を取ろうとしてなんだか違和感を感じた。


騎士の方が慌ててやって来ると、医師長やフリオンさんの耳元で口を開いた。2人とも目を見開くと走りした。


何?何が起こったの?


隣を見上げると、アウロラの顔は怒りに満ちていた。



「人間とはいつの世も愚かで腹立たしい」

「……え?」

「結界の外には出ないでくれ!! 動けるものはなるべく中心に集まる様に!!」



医師長の緊迫した声が静かな暗闇に響き渡る。


薬師たちも集められ、フリオンさんから説明を受けた。みんなの顔がどんどん青ざめていく。



「何種類か解毒薬を作っておきたい。 どんな毒がばら撒かれたか分からないからね」



敵国によってばら撒かれた毒は、生き物たちに侵食していき生命力を奪っていく。この結界が壊れたら、次は私たちの命を奪っていくのだろう。



「心配無用だ。 そなたにはわらわが付いておる」



小さく首を横に振った。



「私1人が残ったところで国は死んでしまう」

「そなたの国ではなかろう?」

「……私の国なんて何処にもないけど、無くなったら悲しいと思うのは私がここを愛しているからよ。 護りたいと思う理由はそれだけで十分だわ」





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