求めよ、さらば与えられん
本当に腹の立つ__っ!



「簡単に諦めるの? 貴方はッ! この国を簡単に見捨てるの!?」

「馬鹿を言うな。 すぐに戦場へ戻る。 こんなところで死ぬわけにはいかない」

「戦って死ねれば本望だと? 本当に勝手な人ね!!」

「お前に戦の何が分かる」



一気に部屋の中の空気が凍りついた。負傷していようと弱っていようとジーン王子の威厳は失われない。むしろ凄みが増している。



「……私を殺しなさい」

「なんだと?」

「戦場に戻る前に私を殺しなさい。 私から家族や国を奪った責任を今果たしなさい!!」



愛する人を失ってまで生きたいなどと思わない。私は共に生きたい。共に生にしがみつく仲でいたい。戦う者だからと終着点が死だと思ってほしくない。どうすればこの人にこの想いが伝わるのだろう。


突然ジーン王子は「ははっ」と笑った。



「お前の太陽の様に温かく人目を惹く姿はアヴァ様によく似ている」



え……?



「ママを、知ってるの?」



ジーン王子は柔らかく笑った。



「そして、先を見据えた強い瞳はルーカス王によく似ている」



涙が溢れた。


この人は私以上に私の大切な人たちのことを知っているのかもしれない。





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