求めよ、さらば与えられん
「ベアトリーチェ!」

「薬室長! お忙しいのにすみません!」



アウロラにお願いして、まだ薬室に残っていた薬室長を呼んできてもらった。ジーン王子には知られたくなかった。



「それより大丈夫かい!? 取られたものとかは!?」

「薬室長が来てからにしようと思って、まだ何も確認できてないんです」



それにアウロラの様子もおかしかったし、一人で部屋の中触らない方がいいような気がした。



「ベアトリーチェ、この花に触れてはいないね?」

「は、はい……アウロラに止められたので……」

「そうか、アウロラが側にいてくれて良かった」



え?え?いったいどういう事?薬室長の顔も花を見た途端険しくなった。



「これは虹花と同じく幻の花と謳われ、そして絶滅したと思われていたんだが……」

「そんな花がどうしてここに?」

「分からない。 それにしても嫌がらせにしてはなんて悪趣味でタチが悪いんだ」



珍しく怒った顔をしている薬室長。アウロラの表情は冷たくて、何を考えてるか分からない。



「この花がなくなった事で喜んでいる人たちは多かっただろう」

「花がなくなって喜ぶんですか?」

「この花の毒は世界で1、2を争う。 あまりの猛毒で解毒が追いつかない上に薬としても役には立たない。 ……暗殺によく使われる毒花だ」



最後言いにくそうにそう言われた。


そんな危ない花を……?それ程憎まれてるって事?


血の気が引いて立ちくらみがした。



「ベアトリーチェ!!」



足に力が入らなくて、その場に座り込んだ。心配する薬室長に「大丈夫です」と言って無理矢理笑った。アウロラは「直ぐに戻る」と言って消えてしまった。





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