求めよ、さらば与えられん
ダミアンさんの曇りのない笑顔は不思議と心を軽くしてくれる。カラッとした話し声も周りを明るくする。



「俺は色々考えるのが苦手だ」

「……へ?」



突然話題が変わって変な声で返してしまった。



「だから周りの者たちがやってくれる。 そして俺はそれに甘えている!!」



もの凄いドヤ顔で言われた。あまりにも堂々としていて呆気にとられた。



「だが、ここぞという時は体を張るし、俺は俺の出来る事で周りの為に頑張るんだ」



ニカっと笑われた。


私の為にそんな話をしてくれた?



「ダミアンさん……」

「あははっ! そんな顔をしなさんな! 言っただろう? お嬢さんの笑顔は周りを癒すってな!」

「……贅沢な悩みかもしれないんですけど、ジーン王子に守るって言われるたびに、私は何もしないで側にいるだけでいいって言われてるみたいで悲しくなるんです。 あの人何も話してくれないし……」



聞かない_聞けないわたしもダメなんだよね、きっと……。



「何もしないで側に居られるなんて、ベアトリーチェ殿はあの方にとって唯一無二の存在だ。 お嬢さんに甘えられるだけであの方は嬉しいんだよ。 人間らしい一面におったまげたね」

「え?」

「お嬢さんだけだ。 今まであの方は大勢に囲まれながらも孤独だった。 漸く安らげる場所を手に入れられた。 お使えする者として嬉しい限りだ。 そう思っているのは俺だけじゃない。 ジルも他の者もそう思っている。 我らはベアトリーチェ殿に感謝の気持ちでいっぱいだ」



大きな扉の前で深々と頭を下げられた。グッと奥歯を噛み締め、こみ上げる涙を我慢した。



「ダミアンさん、ありがとうございます。 私、本当ダメダメで……悩んでばっかりで……でも、そんな私でも_そんな私をあの人が愛してくれるなら、必要としてくれるなら私っ、安心してもらえる場所で居られるように頑張ります。 これからもどうぞ宜しくお願いいたします!」



頭を下げると大きくゴツゴツした手で肩をガシッと掴まれた。ダミアンさんの眉は下がり、目は見えなくなるくらい細くなっていた。






< 212 / 334 >

この作品をシェア

pagetop