求めよ、さらば与えられん
ジーン王子と目が合った。すると大勢の人たちを掻き分けてそばへ来てくれた。



「ユーグ、わざわざすまなかったな」

「美しい姫のエスコートをさせて頂き感謝しております。 主人よりも先に見れましたしね」



そう言ってダミアンさんはニカっと笑った。



「お前__」

「あはははっ! ではこれにて失礼致します!」



態とらしく敬礼してダミアンさんはそそくさと行ってしまった。本当に面白い人だ。


ジーン王子に促され、躊躇いながら脇に腕を通した。洋服の上から感じる腕の硬さに妙にドキドキする。顔が熱い。きっと赤くなってる。恥ずかしくて顔を下に落とした。



「まだ…怒っているのか?」



え?あ……そうだ。まともに会うのは一方的に文句を言ってしまった日以来だ。


珍しくこちらの様子を伺うようなジーン王子の声にいたずら心が働いた。



「ベアトリーチェ、何でもいいから言ってくれ」

「……怒ってます」

「すまなかった……どうすれば機嫌が直る? 教えてくれ。 こういう時どうればいいのかわか__ベアトリーチェ?」



あのジーン王子がもの凄く焦ってる。可愛さと愛しさと嬉しさと……それから可笑しくて笑ってしまった。



「あはははっ! もう怒ってないよ」



そう言ってジーン王子の顔を見上げると、信じられないくらい眉間に皺が寄っていた。ものすごく深い。これはマズイ。ビックリするくらいの勢いで笑いが引っ込んだ。





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