求めよ、さらば与えられん
ジャン王子は人当たりのいい笑顔で奥様を紹介してくれた。控えめで大人しそうな女性。



「ジーン王子のバースデーパーティーでお見かけはしていましたが、お近くで見ると更に美しいですね」



お世辞と分かりながらも照れてしまう。常に堂々と……とは言われたものの、こればっかりは慣れる気がしない。



「ありがとうございます」



照れてる顔が暴露てしまわないように、口元を扇子で隠した。扇子なんて使い慣れないものだから、扇子を開く動作を何度練習したかわからない。練習している横でアウロラが大笑いしていたことは一生忘れない。



「そうそう、風の噂でベアトリーチェ王女はとても凄い力をお持ちだと伺いました」



心臓が飛び跳ねた。ジーンの腕に絡めた手に力が入る。


ダメ、ベアトリーチェ。落ち着いて。大丈夫、ジーンが隣にいてくれる。


扇子で口元を隠したまま笑って見せた。ジャン王子も笑ってる。笑顔の仮面の裏では何を考えてるのか分からない。私が深読みしてるだけ。きっとそう。だってこの人が私の力のことを知ってるわけないもの。



「お恥ずかしながら、凄い力を持っているのは私ではなくジーンです。 どこからその様な根も葉もない噂が流れたんでしょうね」

「はははっ! ご謙遜せずともいいではありませんか。 そのお力、誇りに思うべきですよ」



この人やっぱり何か知ってる!?これ以上突っ込まれたら素知らぬ顔で返す自信ないよ……。





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