求めよ、さらば与えられん
「ベアトリーチェ」



ジーンの声に顔を上げた。体には誰のものかも分からない血が至る所に付いている。伸びてきた手にも乾いた血が付いていた。ジーンはすんでのところで私に触れなかった。



「帰ろう」

「…………」



辺りを見渡し息苦しさが増す。いつのまにか争いは終わっていて、民たちもいなくなっていた。それでも巻き込まれた人たちも地面に血を流して倒れている。



「ジャン……王子、は……」

「…逃げられた。 だが今は追うよりも国へ戻って戦闘準備を整えたい」



戦闘……?それって戦うってことだよね?また戦うの?こんな風に?



「ごめ、なさ__っ、ごめんなさいッごめ__」



力強く抱きしめられた。さっきは触れるのも躊躇っていたのに、今はこんなにもキツく抱きしめてくれてる。


止まらない涙に自己嫌悪が強くなっていく。



「約束しただろ。 何があろうと守ると……誰にも渡さない。 それがたとえ神であろうとだ」



私にそんな価値があるのだろうか?と、素直に喜べない自分が居た。どうしても今は後ろ向きに考えてしまう。



「ベアトリーチェ」



アウロラに名前を呼ばれ、視線の先を見ると、そこにはまだリリーちゃんとロロ君がいた。


逃げなかったの?


咄嗟に手を伸ばした。すると怯えた顔をされた。それでも私の口から溢れたのは「一緒に行こう」だった。


二人は泣きながら駆け寄ってくると、そのまま私にしがみついた。


大声を漏らしながら泣く二人をギュッと抱きしめた。せめてこの子達の前ではもう泣いてはダメ。強くいなければいけない。


下唇をキツく噛み、息を止め涙が出そうになるのをグッと堪えた。私の小さな強がり。





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