求めよ、さらば与えられん
ロアナが幸せそうで嬉しい反面羨ましかった。


毎晩ジーンが部屋を訪ねて来てくれる。側にいてくれるし、抱きしめてもくれる。けど、ただただ甘いだけではない……状況がわかり過ぎているからか、ほのかに緊張感が漂っている。それに加えて私は罪悪感のせいで、心から幸せを感じられなくなっている。


お昼休みが終わりロアナと薬室に戻ると、薬室長から部屋に呼ばれた。



「なんでしょうか?」

「クリストフ王子の様子を見に行って来てほしい」

「……え? 私がですか?」



間抜けな声が出てしまった。


なんで私がクリストフ王子の様子を見にいくの?王子たちは基本私なんかよりずっと上の立場の人に診てもらってるはずなんだけど……。



「国王陛下を診ていると知っているから、君に診て欲しいそうだ」

「それって…クリストフ王子自らのご依頼って事ですか?」

「そうなるね。 熱っぽいと仰っている様だ。 恐らく風邪でもひかれたのだろう。 念の為その他にも気になる症状がないか診てきてほしい」

「分かりました」



クリストフ王子の部屋に向かいながら、徐々に緊張が広がっていく。


お会いするのはジーンのバースデーパーティーの時にお話しした以来だ。


いつもフラフラ出かけてるから、王城に居たことにビックリ。状況が状況だから、流石のクリストフ王子も自重しているのかもしれない。





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