求めよ、さらば与えられん
クリストフ王子が目配せすると、メイドさんたちはみんな部屋から出て行ってしまった。



「弱ってる姿をあまり見せたくないんだ」



優美な笑みでそう言われた。


この方は天然人たらし……だと勝手に思ってたけど、今またそれは少し確信に近付いた気がする。


それと同時に腑に落ちた点が一つ。クリストフ王子を見かける度に感じていた違和感が分かった。王城内を歩いてる時も、パーティーの時も、そして今も1人だという事。ジーンやルネ王子の様に側近がいない。



「どうかした?」

「いえ、何でもありません。 発熱がある様だと薬室長から伺っています。 他に気になる症状はございますか?」

「いいや、他は大丈夫そう」

「お熱診させて頂きますね」



断りを入れてクリストフ王子の額に手を当てた。ほんの少し熱い気がするけど、大したことはなさそうだ。



「風邪だと思いますので、風邪薬お渡ししておきますね。 お熱もそこまで高くないので、少し安静にしていれば、直ぐに良くなると思います」



薬箱から風邪薬を探していると、なんだかやけに視線を感じた。左の頬だけ何かが刺さってる感じがする。お薬をテーブルに置きながらソローッと視線を左にずらすと、バチっとクリストフ王子と視線がぶつかった。


何か付いてる?


左頬を左手の手のひらで払うと笑われた。





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