求めよ、さらば与えられん
「一番上の引き出しを開けてくれる?」



そう言われて少し高さのある引き出しを開けると、瓶が一本入っていた。瓶の中に何か入ってる。


取って欲しいと言われたので言われるがまま取り出した。クリストフ王子に渡そうとしたら、何故か笑顔で返された。


一体何の笑顔?



「それは貴女にプレゼント」

「え? 私にですか?」



中身は多分お茶の葉だろう。見た感じ色んな葉や花びらが混ざっている。


耳元でアウロラに「ベアトリーチェ」と厳しさを含む声で囁かれた。アウロラが言いたいことは分かってる。



「先日戻ってから体調を崩していただろう? それなのに今も忙しくいてるって聞いたから、気持ちのいい睡眠がとれる様にお茶をブレンドしたんだ。 良かったら眠る前に飲んで?」

「ですが……」



人に騙されたり、毒を盛られたりと最近は日常生活のちょっとしたことでさえ、警戒してしまう。ジーンに言えば「警戒する事はいい事だ」と言われてしまいそうだけど、そんな生活とは無縁だった私は今の現実に寂しさを感じてしまう。



「銀の茶器で飲むといいよ」



この人は今私が何を考え思っているのか分かってる。それなのに嫌な顔一つせず、そう言ってくれた。



「……すみません」

「心優しい人だね。 そんな方と一緒に居られるジーン兄様が羨ましいよ」



何て返せばいいのか分からなかった。


クリストフ王子の周りにはいつだって人が集まり賑やかで、華やかな場がよく似合う人だと思っていた。だけど今のクリストフ王子は何故だか孤独そうに見えた。





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