求めよ、さらば与えられん
弾かれる様に足が動いた。



「熱烈な歓迎だな」

「お仕事お疲れ様」

「お互いな」



ジーンにギューっと抱きついたら笑われた。笑いながらも抱きしめ返しながら、頭にキスをしてくれた。


体を離すと勢いよくレミーが肩に飛び乗ってきた。



「今日も一緒に寝れるの?」

「あぁ」



一緒にベッドの中にいても、手が触れていても、体が触れていても、ジーンは必要以上に私に触れてくることはない。


私以上に私の胸に広がった毒の根を気にしているからかもしれない。



「お茶を淹れようとしてたところなの」



お茶の葉が入った瓶を開け、ティーポットに入れてお湯を注いだ。


暫く時間を置いて、葉や花が入らない様に網で漉しながら銀食器にお茶を注ぐと、リンゴみたいな香りが鼻を掠めた。


銀食器をジーッと見つめた。色んな角度から見てみても何処にも変色は見られない。ホッと胸を撫で下ろした。


カップをのせたトレーを持って、フカフカのソファーでくつろいでいるジーンの元へ向かった。



「ありがとう」

「どういたしまして」

「驚いたな」

「え?」

「ちゃんと自分の身も守ろうとしてくれているんだなと思ったんだ」



以前ジーンから銀食器を勧められたことがあったけど、その時は「大袈裟だよ」と言って断ってしまった。そんな私が銀食器を用意してることに安心してくれている様だ。


更に言い出しづらくなった。



「この香りのお茶は初めてだな。 新しくブレンドしたのか?」

「……クリストフ王子に頂いたの」

「……は?」



急に声が低くなった。


隣にいるジーンの顔が見られなくて、カップの中のお茶に視線を注いだ。まるで自分と睨めっこしてるみたいに。





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