求めよ、さらば与えられん
ジーンが銀食器をテーブルに置くと、ガチャンと音がした。その音はいつもより大きかった。それだけでジーンの心の声が聞こえてくる様だった。


普段はなんとも思わない沈黙の時間も、今は気まずく感じる。お茶を飲もうとしたら、ジーンの手に止められた。有無を言わさずカップを取り上げられた。



「そんな顔するな」

「そんな顔ってどんな顔よ」



ジーンの顔を見ると、片手で頬をギュッと挟まれた。



「不満気な顔で口を尖らせるな。 怒りたいのは俺の方だ」



ジーンの手を払いのけた。


怒られるかもと思ってたけど、あからさまに態度に出さなくたっていいじゃない。



「クリストフの母はあのパメラ王妃だ。 血は争えないと言うからな」

「だけど国王陛下の血だって流れてる。 それにクリストフ王子はクリストフ王子よ。 パメラ王妃とは違う」

「いつのまにそれ程仲良くなったんだ?」

「__ッ!?」



ソファーに押し倒され、心臓が大きく脈打つ。私を見下ろすジーンの目は冷めていた。でもその奥に怒りの色が見える気もする。


手を伸ばして、両手でジーンの頬を包み込んだ。それでもジーンの表情は変わらない。



「今日クリストフ王子が体調を崩されたから、往診に行っただけ。 そのお礼にってお茶をくれたの。 銀食器を使うように勧めてくれたのもクリストフ王子」



ジーンの眉がピクッと動いた。



「最初に話さなくてごめんなさい」



覆いかぶさるように抱きしめられた。耳元で聞こえるため息。ジーンの背中に腕を回した。





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