求めよ、さらば与えられん
私だって銀食器にお茶を注ぐまでは心のどこかでクリストフ王子を疑ってた。でも、ジーンの口から血の繋がった兄弟を疑うような言葉を聞くのは嫌だった。これは私のワガママなんだろうか。


ジーンの手が背中に回り、グイッと身体を起こされた。流れるような動作でジーンの唇が私の唇にそっと触れた。私の頬を撫でる手に自分の手を重ねると、ジーンは目を伏せながら静かに笑った。それは自嘲するような笑みだった。



「駄目だな、俺は」

「ジーン?」

「お前の事となると呆れる程心が狭くなる」



みんながいるところではいつだって威厳を持ち堂々としているジーン。そんな彼が私の前でしか見せない顔を見ると、愛おしさが増していく。


そしてこれは絶対本人には言えないけど、可愛いと思ってしまう。



「ジーン、大好き」



出来る限りの笑顔で伝えると、ジーンも優しい笑顔で返してくれた。


ジーンにカップを手渡され、2人でお茶を飲んだ。


ほんのり甘く、だけどスッキリした味わいがした。とても口当たりのいい味。



「美味しい」

「そうだな。 クリストフに美味かったと伝えておいてくれ」

「自分で伝えたらいいじゃない」

「……あぁ、そうだな」



少しの間の後、ジーンは小さくそう言った。この感じだと会っても言わなそう。


国王陛下ともそうだけど、クリストフ王子とも何か確執みたいなものがあるんだろうか。ジーンが仲良く話している家族はルネ王子だけだ。




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