求めよ、さらば与えられん
クリストフと仲良くなるにはさほど時間はかからなかった。それはクリストフの人柄なのか、波長が合ったのかは分からない。



「ベアトリーチェ」

「どうしたの!?」



薬室で仕事をしていたらクリストフが訪ねて来た。クリストフの部屋でお茶をする事はあっても、彼がここへ訪ねてくるのは初めての事だ。頻繁に顔を出すルネ王子には免疫ができているみんなも、クリストフの存在には落ち着かない様子。


クリストフはそばまで来ると「仕事中にごめん」と言った。



「散歩がてらこれを渡したかったんだ」



紙袋を受け取り中を見た。この瓶は……。



「もらっていいの?」

「もちろん。 その為に持ってきたんだからね」

「ありがとう」



クリストフはブレンドしたお茶を瓶詰めにして持ってきてくれた。そろそろ無くなりそうだったから嬉しい。


実のところ、クリストフからもらったお茶を飲む様になって体調がいい。お茶のおかげで安眠できているからかもしれない。その事を話したら、クリストフは自分のことの様に喜んでくれた。


ロアナに「少し外すね」と言って、私はクリストフと薬室の外に出た。



「ジーンと話をした?」

「ジーン兄様と? いや…話してないよ。 どうして?」



あれから数日経つというのに、やっぱり何も言ってないんだ。忙しいのは重々承知してるけど、切ない気持ちになった。



「ジーンもクリストフのお茶を美味しいって言ってたよ」

「本当?」



信じられないとでも言うような顔をされた。



「いつも寝る前にジーンと2人で飲んでるよ。 ジーンも疲れが溜まってるから、助かってる。 ありがとう」

「そっか…うん…ははっ、嬉しい。 僕なんかでも誰かの役に立てて凄く嬉しい。 僕の方こそお礼を言わないと……ありがとう」



クリストフは何故だか自分に自信がない。 ふとした時に自分を卑下する様な言い方をする。優しさと思い遣りに溢れているというのに、そんな自分では駄目だと思っている様にも見える。





< 276 / 334 >

この作品をシェア

pagetop