求めよ、さらば与えられん
ジーンもアウロラも、クリストフの話を遮ることはない。とても真剣な目で彼を見つめている。


ジーンはどことなく辛そうに見えるクリストフを、兄として見守っているようにも思える。ルネ王子といる時に見せる眼差しと似ている。



「翌朝、ネージュの身体は冷たくなっていて、ピクリともしなかった。 声をかけようとも、身体を揺さぶろうとも、僕の声は届かなかった。 全身には黒紫の根が張っていた……」

「根って……」



腕を上げ、指先に張る根を見た。


ジーンは私の手を取り、指先に口付けた。冷たくなった指先に微かな温もりを感じた。



「何故そんな事になった」



ここで漸くジーンが話に入ってきた。



「分からない。 母様はただ一言僕にこう言った……『我らの運命』なのだと……。 それから生きているものに触れるのが怖くなった。 母様はそんな僕に手を差し伸べてくれはしなかった。 それどころか楽しそうに見えたよ」



酷い。


血の繋がった我が子にさえ愛情を注がなかったっていうの?どうして……そんな言葉ばかりが浮かんでくる。



「わらわたち精霊は、生まれたらまずはじめに己の力を知る事から始めるのだ。 精霊は生まれた時はどんな力を持っているのか、周りのものは勿論だが、当人ですら知らぬ」



アウロラはそう言うと、クリストフに近づき目線を合わせた。





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