求めよ、さらば与えられん
ついさっきまでは酷く警戒していたアウロラ。だけど今アウロラを包む空気は優しかった。私に接してくれているような姿。



「エデが生まれて初めての力の覚醒は、精霊界に恐怖と憎しみをもたらした」

「……何故?」



クリストフの振り絞るような声。


アウロラは床に膝をつき、クリストフの手を両手で握りしめた。


クリストフの瞳は微かに潤み、私まで泣いてしまいそうになる。



「まだ幼き頃、エデとアヴァが大喧嘩をしたことがあったのだが、その時怒りや悲しみ……負の感情を抑えることなく解放したエデは力を一気に放出した。 草木は黒ずみ、力の弱き精霊や動物達はエデの力に耐えきれず、命を落としてしまった」

「っ__」



クリストフの眉間や口元に力が入っていく。ギュッと閉じられた唇は震え、一粒の涙が頬を伝って落ちていった。まるで自分の事のように悲しんでいる。とても苦しそう。


私の心にその感情が流れ込んでくるようだった。なんだろう。涙がこみ上げてくる感覚に襲われる。今にも泣いてしまいそうだった。



「数々の悪行を行ったエデを擁護する訳ではないが、あの時ばかりはエデの担うであろう辛く苦しく、茨の道であろう生をわらわは同情した」





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