求めよ、さらば与えられん
「ふふっ」とエデ伯母さまの小さく渇いた笑い声が聞こえた。力なく弱々しい。



「わたくしは賭けに負けたのね……」



え?


どういう事?



「もっと早くにこうするべきであった。 わらわのつまらぬ欲の所為で必要以上にベアトリーチェを苦しめる事となってしまった……そなたとの時が幸せすぎて他に方法はないものかと躊躇ってしまった……本当にすまない」



優しい顔をして私の頬を撫でるアウロラの手を握った。


細くて長い指先、そして絹の様な肌が人形の様にだんだんと冷たくなっていく。



「何を…したの? アウロラ……」

「わらわの全ての生命力をそなたへ流し込んだのだ」

「どういう事……?」

「わらわは目の前でアヴァを失った時、何もする事が出来なかった。 その事を何度悔やんだか分からぬ。 だが天の巡り合わせとは不思議なもので、数えきれぬ人の中からわらわはそなたと出会う事が出来た。 その時強く誓ったのだ、命をかけてアヴァの_我らの愛し子を守ろうと」



それって……っ、じゃあアウロラはどうなるの……?


胸の奥がギュッとなる。涙がどんどん溢れ出てくる。それなのに当のアウロラの表情は穏やかだ。



「わらわが生命力を注ぐ事でそなたの中の毒を全て消し去った。 同時に呪いは術者へと跳ね返ったのだ」

「アウ、ロラ……っ」

「そなたにかけられた呪いは無効となった。 そなたの命はまだ消えぬ。 まだまだ夢が沢山あるであろう? どうか、悲しみにのまれる事なく、明るい未来を見続けておくれ、ベアトリーチェ」






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