求めよ、さらば与えられん
いや……やだっ__!!


そんなのってないよ!!



「お願いっ、いかないで__ッ!! アウロラがいてくれないと私__」

「何を言うておる。 そなたには坊やがおるであろう? 坊やだけではない。 レミーやロアナ、ヘンリー、精霊たち、妖精たち……挙げだしたらキリがないのう」



「ふふ」と笑うアウロラの笑顔はお日様の様に温かく美しい。清々しい程の笑顔。


それでも私の心は整理がつかない。頭が追いつかない。


アウロラの体から温もりがなくなり、姿も少しずつ霞んでいく。



「坊__ジーン」



アウロラが初めてジーンの名を呼んだ。嬉しいはずなのに、胸が痛い。



「そなたにはまだ貸しを作ったままであったな」

「返してもらわないままいくのか? 随分と損をするな」

「フンッ、何を言うておる。 きっちり返してもらうに決まっておろう」



凛々しい面持ちのアウロラは空いている方の手をジーンの頬に当てた。ジーンは一瞬驚いた顔をしたけど、直ぐにいつもの強い眼差しに戻った。



「どうか、ベアトリーチェに愛の絶えぬ世界を……それで貸し借りは無しにしてやろう」

「俺の一生をかけて借りを返すと誓う」



満足気に微笑んだアウロラは顔を後ろに向けた。






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