求めよ、さらば与えられん
「ヴィクトル、クリストフ、エデをここへ連れてきてはもらえぬか」



国王陛下がエデ伯母さまを抱え、私たちのところまで歩いてきた。側には目を潤ませたクリストフもいる。



「お互いボロボロだな」

「ふふっ、本当にね……もう疲れたわ……」

「そなたは全く……しょうのない奴だこと……」



今のエデ伯母さまからは嫌な感じがしなかった。怪しさも影も感じられない。私を殺そうとしたエデ伯母さまと同一人物だと思えない程、穏和だ。


まるで憑き物が落ちたみたいに見える。



「最期に言うておくことはないか」

「そうね……ヴィクトル、わたくしは貴方と出会えて確かに幸せを感じたわ。 感謝しているわ、ありがとう」

「私も幸せだったよ、パメラ」



国王陛下にとっては精霊のエデじゃない。出会ってから今も愛した女性_パメラなんだ。



「クリストフ」

「は、はい__っ」

「弱い母でごめんなさい」

「……え?」

「愛していなかったわけじゃない……愛することが怖くて、貴方を遠ざけた。 力のことで貴方に恨まれているのではないかと、怯えていたの……わたくしはただ貴方から逃げていただけ……ごめんなさい」



クリストフは消えゆくエデ伯母さまの体を泣きながら抱きしめた。そして「母様、大好きだよ」と涙声で告げた。





< 330 / 334 >

この作品をシェア

pagetop