求めよ、さらば与えられん
「行くぞ」

「へ……?」



何処に?


あまりにも唐突な物言いに変な声が出てしまった。



「部屋まで送る」

「え!? いや! 大丈夫! 1人で戻れるから!」



突然何言い出すの!?ジーン王子から『部屋に送る』だなんて……何か企んでるに違いない!



「まだパーティー終わってないんでしょ!? 私のことは気にせず戻って!」



ジーン王子の顔が……もの凄く眉間にシワが寄った。怖い。



「いいから行くぞ」

「で、でも……」

「退屈なパーティーに飽き飽きしていたところだ」



私のことは放っといてくれなんて通じる雰囲気じゃない。これは私の為じゃなくて、パーティーを抜けたいが為の口実だろう。


諦めて靴を履いた。



「いっ__!!」



歩こうとしたら足に激痛が走った。マメ潰れてたんだった!さっきまでは大したことなかったのに……。



「無理をしてそんな靴を履くからだ。 自業自得だ」



呆れた声で言われた。言い返そうにも言葉が出ない。自業自得かもしれないけど履きたかった。だって国王陛下が下さった靴だから……。



「っ!? え!?」

「大人しくしていろ」



突然抱き上げられて体が強張った。子供の頃はヘンリーやパパがしてくれていたお姫様抱っこも、この歳になってからはされた記憶がない。


この人にはきっとなにを言っても無駄だろう。そう思った私は観念してジーン王子の腕の中におさまった。



「すみません……ありがとうございます」

「…………」

「それから、レミーも連れて来てくれてありがとう……」



っ__!今、笑った?


微かな光に照らされた顔がそう見えた気がした。


とても静かな夜なのに、私の胸だけがザワザワと煩かった。





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