求めよ、さらば与えられん
リュカさんを見かけてからロアナはずっと顔が緩んでる。幸せそうな顔。恋をすると人はこんな顔をするのか。



「ビーチェは本当にいい人いなかったの?」

「え?」

「ちょっとでも気になるなぁーって人も?」

「い、いなかったよ!」



一瞬だけど、本当に一瞬だけど、ジーン王子の顔が浮かんだ。



「ああー! その顔は絶対いたよね!?」

「いないってば!」



あれは只ビックリしただけ。冷徹非道男が気まぐれに優しかったものだからドキッとしただけ。胸がざわついたのは信じられなかったからよ。



「じゃあさ、うちのお兄ちゃんはどう?」

「え!? 何で!?」

「お似合いだと思ったから。 それに、ビーチェがお嫁に来てくれたら私も楽しいし!」



それはもはやロアナの楽しさ重視よね?


ロアナのお兄さんは大人な雰囲気でとても優しい人だった。そのせいか、少しヘンリーと重なって見えた。


ロアナにはやんわりお断りしながら私たちは薬室へ戻った。





< 84 / 334 >

この作品をシェア

pagetop