求めよ、さらば与えられん
「ベアトリーチェ、これを資料室へ戻して来てくれ。 そのままお昼に入っていいから」

「はい、分かりました」



ある日のお昼前、薬室長から分厚い本を一冊受け取った。いつもはロアナに頼んでるけど、今日はお休みだから私に頼んだんだろう。


以前場所を覚えるために、ロアナに付いて資料室には2、3回行った事がある。資料室は薬室とは全然違う場所にあるから、行くだけでも少し時間が掛かる。その上、資料室を利用して居るのはほぼほぼ政務官の方々だから、雰囲気が固くて居心地が悪い。薬室の和やかさを少し分けたいくらいだ。


_コンコンコン。



「失礼致します」



部屋に入った瞬間いろんな人の視線を感じた。薬師って言うだけでも浮くのに、殆ど女性のいない資料室は私の存在は浮きまくりだ。


政務官を務める方々は圧倒的に男性が多い。メイドは女性しかいないが、基本的にここには出入りすることはない。



「ベアトリーチェ殿?」

「カステルさん!」



知った顔を見てホッとした。



「何かお探しですか?」

「いえ、薬室長に頼まれて、資料を返却しに参りました」

「場所は分かりますか?」

「大丈夫です! お気遣いありがとうございます」



頭を下げた。カステルさんっていい人。


カステルさんは部下らしき人に呼ばれると「ではまた」と言って行ってしまった。


私は大量にある棚から元の場所を探して何とか本を返す事ができた。





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