求めよ、さらば与えられん
せっかくだから中央庭園通って戻ろうかな。


お城はとても広くて、職種によって行動範囲が限られる。いくつかある庭園のうちの一つである中央庭園は私の行動範囲からずれているため、あまり来ることはない。


綺麗に咲き誇るお花を愛でながら気分良く歩いていると、ある葉っぱが混ざってるのに気づいた。


薬草園ではあえて栽培してるけど、これはどうなんだろう?道を挟んで反対側を見てみた。ここには生えていない。


観察しながら歩いていると、目の前にいるルネ王子に気付いた。その隣にいるのはリュカさんだ。もう1人知らない男性がいる。


今日ものんびりなルネ王子。みてるだけで癒される。手にはしっかりと本が握られていた。本を持ってない日はないんじゃないかと思う。


ルネ王子が空いている手を伸ばした。その先にある葉っぱを見てハッとなった。


咄嗟に体が動く。



「いけません!!」



言葉と同時に手を伸ばした。ルネ王子が葉っぱに触れてしまわないように。



「お怪我はございませんか!?」



ルネ王子の手を見てホッとした。綺麗な手のままだ。



「貴女は確か、薬師の……」

「申し遅れました! 王城薬師のベアトリーチェと申します!」



リュカさんはロアナを通じてなんとなく私の事を知ってくれていたんだろう。






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